大判例

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東京高等裁判所 昭和25年(う)1461号 判決

本件記録によれば原審が証人石川又市及び同渥美かづ子を裁判所外で尋問するに当り被告人本間に公判廷においてその日時場所を告知しているけれども尋問事項を知らせていないこと及び被告人本間は当時勾留中で右証人尋問に立会しなかつたことは所論のとおりである。

しかしながら、本件記録によれば右証人は被告人本間の弁護人等の申請により尋問することとなつたものであつて、裁判所は弁護人提出の尋問事項を記載した書面に基き証人を尋問し弁護人も之に立ち会い証人に対し詳細尋問しているところであり、且右証人尋問調書は被告人本間の出廷せる公判廷において朗読せられ同被告人より意見が陳述せられ、尚被告人本間及び弁護人より同被告人に尋問事項が告知されなかつたことについて異議を述べたこと、同被告人及び弁護人より右証人に対し必要な事項の尋問を請求したこと及び更に右証人を公判廷において尋問すべき請求をなしたことは認められないから同被告人が尋問事項を知らされなかつたために特に不利益を受けたものとは認められない。従つて右証人尋問の手続に同被告人に尋問事項を告知しなかつた瑕疵あるも右証人の尋問調書の証拠能力には影響ないものと解するを相当とする。又被告人弁護人及び検察官に異議がなかつたので裁判所において刑事訴訟法第百五十八条第一項所定の事項を考慮した上右証人を裁判所外において尋問することとしたものであつて所論のような不当の点はない。論旨は理由がない。

同第一の三について。

被告人宮田二の検事太田輝義に対する供述調書に契印を欠くこと所論のとおりであるが、契印を欠く調書が法律上無効であるとの規定がないのみでなく太田輝義によつて作成せられたこと同調書の文詞が前後相連絡し矛盾するところなく、且つ同一筆跡であること等により明白であるから右契印の欠如は同調書の証拠能力に影響はないと解すべきである。次に渥美かづ子の検事に対する供述調書は検事の署名捺印と契印を欠くこと所論のとおりであるから仮令渥美かづ子及び立会の検察事務官の署名捺印が存し弁護人が右書面を証拠とすることに同意していても、検事の署名捺印を欠く以上右調書の証拠能力は否定しなければならない。従つて、かかる証拠能力のない書面の証拠調をした原審の訴訟手続は違法であるけれども右調書は原審において本件事実認定の証拠として引用していないので、右違法の点があつても判決に影響ありとは認められないから原判決破棄の理由とはならない。論旨は理由がない。

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